「特例子会社に興味はあるけど、よくわからない…」
本記事を読んでいる方は特例子会社は安定して働けると聞いたけど、実際精神障害者にとってどうなの?と気になっているのではないでしょうか。
本記事ではうつ病もちで実際に特例子会社で働いたことのある私が体験ベースに特例子会社の実態を書きました。
内容としては、
- 特例子会社は精神障害におすすめ?
- 特例子会社の給料や仕事
- 特例子会社の求人の探し方
等をまとめました。
特例子会社で働いたことのある人が書いたリアルな記事ってほとんどないと思うので、是非読んでみて下さい。
特例子会社を簡単におさらい
一般の民間企業は、「全体として2.2%の障害者を雇わなければいけない」と法律で定められています。
雇用率を達成していない企業には障害者雇用納付金という罰金が発生します。
また大企業は、未達成となると企業の社会的責任(CSR)を果たしていないと判断され、イメージダウンにつながってしまいます。
ただ、なかなか2.2%を雇うのって難しい…。
というわけで生まれたのが特例子会社制度。
親会社は一定要件を満たせば障害者の雇用促進を目的として、特例子会社を設立します。
この特例子会社で働く障害者の人数を親会社の雇用率に加えてもいいというわけですね。
【会社側の特例子会社の設立メリット】
障害者雇用率の達成することにより、障害者雇用納付金の支払いを免除できる
企業の社会的責任(CSR)をはたすことができ、イメージアップにつながる
障害者の配慮設備を一か所にまとめ、経費を削減できる
給料や福利厚生など、親会社とは違う労働基準を作ることができ、障害者が安定して働きやすい環境を作ることができる
特例子会社は安定して働きたい精神障害者におすすめ!
結論からいうと、特例子会社は精神障害を持っており、安定して働きたいと思っている人にはおすすめの会社です。
障害者雇用の促進と定着を一番の目的としているため、一般企業の障害者枠よりもやはり配慮が整っており安心して働きやすいのがリアルで働いている私の感想です。
特例子会社でよくあげられるメリット・デメリットは下記の通り。
- 障害者に配慮した環境が整っていて、安心して働ける
- 障害を持った人同士の職場なので、お互いに障害に対して理解がある
- 障害者でも部長職など重役になれる可能性も
- 給料が安い
- 単純な作業が多く、専門スキルが身につきずらい
- 障害者枠でないところで転職する時に会社名から障害の有無がばれやすい
- 様々な障害を持った人と一緒に働くので、特例子会社特有の働きにくさがある
- 都市部に集中しており、地方では求人が少ない
この中で一番皆さんが気になっているデメリットとしては給料が安いことと、単純作業が多く専門スキルが身につきづらいという部分だと思います。
私の経験からしても、確かに特例子会社は一般の障害者枠よりかは給料が安くなる傾向がありますし、単純作業が多く、専門スキルが身につきずらいというのも事実です。
ただ、それよりも個人的に精神障碍者として働くのに一番大事な要素は
安定して長期間働く
だと思っています。
精神障害者の1年以内の定着率をグラフにしてみました。
求人種別 | 3か月 | 1年 |
---|---|---|
障害者枠 | 82.7% | 64.2% |
一般枠 障害オープン | 65.6% | 45.1% |
一般枠 障害クローズ | 51.9% | 27.7% |
平均 | 66.7% | 45.7% |
出典:「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年4月 独法 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
1年間続いている人は約45%なので、半分は離職していることになりますね ^^;
また精神障害で3年以上就業を継続している人は、全体の約2.5割しかいないという調査結果も出ています。
こうしてみると、いかに精神障害の離職率が高いかが分かりますね。
結局のところ給料が高いところに入っても、定着しなかったら意味がありません。
安定して働きたいと考えている方には特例子会社も検討してみることをお勧めします。
【こんな方は一般の障害者枠の方がおすすめ!】
- 働きたい職種が事務職以外の専門分野
- 障害を考慮してもらいながらもバリバリ働きたい
- 給料はたくさんほしい
- 同じ障害を持った人と働くのは逆にストレスがたまりそう
上記に当てはまる方は特例子会社よりも一般の障害者枠の方がいいですね。
特例子会社の給料は?精神障害だと安くなる?
精神障害で入った場合、特例子会社の給料はどれくらいになるのでしょうか。
まずは精神障害の平均年収がどれくらいなのか見てみましょう。
「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」によると精神障害者の平均月収は下記の通りです。
平均 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 | 20時間未満 |
---|---|---|---|
12.5万 (140万~225万) |
18.9万 (226万~ 340万) |
7.4万 (89万~) |
5.1万 (61万~) |
※()は月収をボーナスも考慮して月12~18倍にした年収です。
※20時間以上30時間未満、20時間未満はボーナスはおそらくないため、月を単純に12倍にしました。
これを踏まえて、「2016年の野村総合研究所」の特例子会社の平均年収に関する調査を見てみましょう。
年収 | 割合 |
---|---|
101~150万 | 21.6% |
151~200万 | 33.5% |
201~250万 | 21.6% |
251~300万 | 10.8% |
301~350万 | 7.2% |
351~400万 | 3.0% |
401~450万 | 1.2% |
451~500万 | 1.2% |
500万以上 | 1.2% |
一番多いのは151~200万ですね。
精神障害者の平均がだいたい140~225万なので、特例子会社だから低いというよりは精神障害者全体が月収が低いといえそうですね。
精神障害者の給料が安い理由
精神障害者の給料が安い最も大きな理由は、時給制のパートタイムが多いから。
精神障害の場合、契約社員もかなり多く、正社員としてがっつりボーナスをもらいながら働く人は少ないんですね。
なので逆に言うと正社員として働くことが給料を上げる大きな要因になると言えます。
また、離職率も高いので一つの会社で実績を上げづらく、昇進・昇格もしずらいのも大きな要因の一つと言えるでしょう。
【実体験】特例子会社の給料・年収は?実際に働く私が昇給・ボーナスの有無なども解説
精神障害でも特例子会社は正社員にはなれる?
一般の障害者枠にしろ、特例子会社にしろ、まずは正社員になることが一番の給料アップへの道とお伝えしました。
それでは精神障害の場合でも正社員になることは可能でしょうか。
これは体調が安定していれば、可能です。
精神障害の場合は、雇う側が一番心配しているのが安定して働いてくれるかどうかです。
特例子会社の場合でもこれは一緒で、最初はパートか契約社員からのスタートが多いですね。
そこで安定して働けることができれば正社員になれる可能性がグーンと広がります。
ちなみに、野村総合研究所の調査の調査が行った調査によると、特例子会社の正社員比率は以下の通り。
濃い青の部分が正社員の割合です。
約7割の人が正社員になっていると考えると、「自分もいけそう!」と希望がわきますよね ^^
ただし、各特例子会社によって正社員登用への評価基準も違いますし、なかにはなかなか正社員になりにくい会社もあります。
もしこれから特例子会社に応募する段階であれば会社のHPや支援機関や転職エージェントの担当者からしっかり情報を集めるところから始めた方がいいですね。
精神障害でも特例子会社は昇進・昇格できる?
精神障害で特例子会社に入った場合、昇進・昇格できるかどうかも非常に気になるところですよね。
特例子会社は従業員の大部分が障害者であり、リーダー職を障害者に任せている場合が多いです。
中には部長職等の重役も障害者から登用する会社もあります。
特例子会社の場合だとライバルも障害者なので一般企業の障害者枠より昇格はしやすいかなと思います。
精神障害の場合で昇格するのに大事な点は、下記の通り。
- 安定して働ける実績を作る
- その上で自分にできる仕事を精一杯やり切る
特例子会社と言えども、昇格するかどうかは普通の企業と同じで自分の頑張り次第ですね。
ちなみに私のいる特例子会社は完全に実力主義で年齢等は関係なく、能力のある人が昇格してますし、何人かの部長は障害者が担っています。
精神障害で入った場合の特例子会社での仕事内容は?
特例子会社の仕事内容は下記グラフを見てもわかる通り、事務職か清掃業が多いです。
- 事務が69.2%
- 清掃・管理が46.2%
となっていますね。
特例子会社の仕事は、ほとんどが親会社の業務からルーティン化できる部分を切り出したものです。
特例子会社は利益を上げることよりも障害者の雇用促進がメインなので、業務もハードではなく変化量の少ない事務職や清掃業が多いということですね。
さらに精神障害の場合だと体調を考慮して、身体障害者よりも変化量が少ない単純な作業を任されることも。
特例子会社のデメリットとしてよくあがる「仕事が単調でスキルがみにつかない」というのも経験上、事実です。
ただし、どんな仕事内容を任されるかもその人の頑張り次第によって大きく変わります。
私の場合も、最初は体調面を考慮して最初は単調な作業でした。
最初はそれでよかったのですが、体調が安定してくれると「仕事がつまらない…」と思うようになりました。
そこから色々自分なりにできることを精一杯取り組み、難しそうな仕事があれば、積極的にアピールして任せてもらうようになりました。
今では、特例子会社で働きながらも割とやりがいのある仕事を任せてもらっています。
確かに特例子会社の場合だと任される業務にも上限があります。
昇進・昇格しても責任や教育することは増えますが、行っている業務自体は本質的には同じですよね。
例えば専門職を目指したい場合は、特例子会社ではなく一般の障害者枠の方がいいですね。
ですが、「安定して働きたいけど仕事が単調そう…」という理由で悩んでいる方は、自分次第で仕事を楽しくすることもできますので、
特例子会社の精神障害者の比率は?
特例子会社の精神障害者の比率も気になるところですよね。
平成 30 年 障害者雇用状況の集計結果によると、特例子会社の障害者の割合は下記の通り。
人数 | 割合 | |
身体障害 | 11,478.5人 | 35% |
知的障害 | 16,211人 | 50% |
精神障害 | 4,828.5人 | 15% |
全体 | 32518人 | 100%
|
15%が精神障害者の割合になっています。
これを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれですが、近年精神障害者の雇用数はどんどん増えています。
同調査によると、
雇用者のうち、身体障害者は 346,208.0人(対前年比3.8%増)、知的障害者は121,166.5人(同7.9%増)、精神障害者は67,395.0人(同34.7%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。
とあります。
企業が雇わなくてはならない法定雇用率が年々上がっていることに加え、精神障害者の数も増えているので、今後も精神障害者の雇用数は増え続けていくでしょう。
そうなると、特例子会社に占める精神障害の数もどんどん増えていくことが想定されます。
実際に私のいる特例子会社でも精神障害者の雇用に最近では、力を入れています。
「自分と同じ精神障害を持った人と一緒に働いた方が安心して働けるかも…」と考えている方は特例子会社はありですね。
特例子会社の求人の探し方
ここまで読んでみて、「特例子会社で働いてみたいな」と思った場合、どのように求人を探せばよいでしょうか。
特例子会社を探す先は大きく分けて、5つあります。
- ハロワーク
- 就労移行支援
- 障害者支援・生活センター
- 障害者職業センター
- 障害者向けの転職サイト・エージェント
求人を実際に持っているのは1.のハロワークと2.の転職サイトや転職エージェントです。
2~4や就職支援をしてくれる場所ですね。
ハローワークで仕事を探すにしろ、転職サイトで探すにしろ、一人で探すのはなかなか大変です。
なので、支援機関の担当者や転職エージェントの担当者に相談しながら一緒に探すのがおすすめ。
また、特例子会社の数自体は2017年度時点で464社しかありません。
2014年時点で全国にある法人企業数は約187万。いかに特例子会社が少ないかが分かりますね。
数が少ないので、
- できる限り多くの求人情報に出会うこと
- 非公開求人や担当者のつながりから求人を紹介してもらうこと
この2つが非常に重要になります。
私が良いと思う求人の探し方で一番いいと思うのは下記のやり方です。
- 就労移行支援/障害者就業・生活センター/障害者職業センターに複数登録し、ハロワークの求人を一緒に探す
- 転職エージェントに複数登録し、担当者と一緒に求人を探す
支援機関も転職エージェントも複数登録しておいて、より多くの情報を取得してチャンスを増やすということですね。
まとめ
本記事の内容をまとめると、下記の通り。
- 特例子会社は安定して働きたい精神障害者におすすめ。
- 特例子会社の給料が安いというよりは精神障害者全体が年収が低い。
⇒特例子会社で一番多い年収比率は33.5%の151~200万、精神障碍者の平均が概算で140~225万 - 精神障碍者の給料が安いのは、以下の2つが原因。
- 短時間労働が多い
- 離職率が高く、昇進・昇格がしずらい。
- 正社員として働くことが特例子会社給料アップのカギ
- 精神障害でも正社員や昇進・昇格は可能か。
⇒障害に関わらず可能。 - 精神障害者が特例子会社で行う仕事内容は事務や清掃など変化の少ない仕事が多い
⇒仕事を楽しくしたければ自分からどんどんアピールする必要あり - 特例子会社の精神障害者の比率は平静30年時点では15%。年々増えてきている。
やっぱり皆さん安定して働きたいという理由から特例子会社は人気になっています。
本気で特例子会社の転職求人を探したい場合は障害者専用の転職エージェントがおすすめ。
ハローワークだと自分で何から何までやる必要がありますが、転職エージェントだと自分にマッチングした求人探しから面談の調整まで全て代行してやってくれます。